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第5回勉強会 / ボトルネックをどう見つけるか

3章 / BCWを参考に最初の一つを決める

行動を妨げる条件に合わせて、最初に試す方法を選ぶ。

01 / BCWとは何か

変えたい条件から、働きかけ方を考える。

1章では取り組む領域を選び、2章では具体的な行動を妨げる条件を見直しました。この章では、その領域の中で、最初に試す変更を選びます。

2章で見つけた条件を、どう変えればよいでしょうか。行動の分析から働きかけ方を考える枠組みが、行動変容ホイール(Behaviour Change Wheel:BCW)です。Michieらが19の既存の枠組みを検討し、2011年に発表しました。[1]

行動変容ホイールの日本語版。中心は能力(身体的・心理的)、機会(社会的・物理的)、動機(熟慮的・自動的)。中間の9区分は教育、説得、インセンティブ付与、強制、訓練、実行支援、モデリング、環境の再構成、制限。外側の7区分は環境・社会計画、コミュニケーション/マーケティング、法制度、サービス提供、規制、財政的手段、ガイドライン。
行動変容ホイール(BCW):Michieら(2011), Figure 2の日本語版。原図の区分と配置を保ち、日本語訳・再作図を行いました。原図:CC BY 2.0。画像を拡大。

中心にはCOM-Bがあり、その周りに9種類の働きかけ、さらに外側に、それを支える7種類の政策があります。この働きかけの種類を「介入機能」と呼びます。輪の形は、実行する順番を表すものではありません。[1]

今回は、個人が試せる働きかけを考えます。知識を補うのか、技能を練習するのか、環境を変えるのか。2章で立てた仮説から、方法を探します。

変えたい条件に、方法が合っているかを確かめる。

02 / 働きかけの方向を見渡す

同じ「できない」でも、必要な働きかけは違う。

方法の名前に加えて、それによって何が変わるかを見ます。知識・技能を変えるのか、実行できる条件を変えるのか、評価や感情を変えるのか。その仕組みから、能力(C)・機会(O)・動機(M)とのつながりを考えます。

介入機能何に働きかけるか
教育

知識や理解を増やす。

やり方が分かれば心理的能力(C)に、行動の意味や結果を理解して評価が変われば熟慮的動機(M)に関わる。

対策例:散歩の経路や、仕事の作業手順を説明する。

説得

伝える内容によって、感情や行動への意欲に働きかける。

意識的な評価を変える経路と、感情的な反応を引き起こす経路があるため、熟慮的・自動的動機(M)に関わる。

対策例:運動を続けた先に楽しみたい暮らしを、言葉や写真で伝える。

インセンティブ付与

報酬を得られると期待させる。

「得になるから取り組もう」という判断は熟慮的動機(M)に、報酬への期待から生じる欲求や衝動は自動的動機(M)に関わる。

対策例:一週間の学習目標を達成したら、楽しみにしていた映画を見ると決める。

強制(Coercion)

罰や費用が生じると予期させる。

「不利益を避けよう」という意識的な判断は熟慮的動機(M)に、関連する場面で生じる恐れや不快感は自動的動機(M)に関わる。

対策例:運動教室の無断欠席にキャンセル料を設ける。

訓練

練習を通して技能を身につける。

身体を動かす技能なら身体的能力(C)に、考え方や感情・行動を調整する技能なら心理的能力(C)に関わる。

対策例:スクワットのフォームを反復練習する。難しい会話の受け答えを練習する。

制限

ルールによって、対象の行動や競合する行動を取りにくくする。

選べる行動を変えることで、物理的・社会的機会(O)に関わる。

対策例:勉強する時間帯には、SNSアプリを開けないよう利用制限を設定する。

環境の再構成

物理的・社会的な状況を変える。

時間・配置・周囲の条件を変えて実行しやすくする経路は機会(O)に、行動のきっかけとなる刺激を変える経路は自動的動機(M)に関わる。

対策例:歩く靴を玄関に出しておく。仕事中はスマートフォンを別の部屋に置く。

モデリング

目指したり、まねしたりしたくなる手本を示す。

原典では、模倣を通じて行動への反応を生む働きとして、自動的動機(M)に対応する。手本を使って技能を練習する部分は、訓練として考える。

対策例:自分に近い生活条件で運動を続けている人の実践を、手本として紹介する。

実行支援(Enablement)

他の介入機能とは異なる仕組みも使い、実行の妨げを減らす。

身体や認知の働きを補う支援は能力(C)に、実行できる条件を増やす支援は機会(O)に関わる。原典は、薬物的な介入などによって衝動へ直接働きかける経路も挙げ、自動的動機(M)にも対応づけている。

対策例:歩行を助ける補装具を使う。禁煙支援で、喫煙衝動に対処するための薬物的な支援を受ける。

定義は原典Table 1、COM-Bとの対応と仕組みの説明はTable 2・脚注および本文をもとにした言い換えです。対策例は働きの違いを理解するための例で、個々の対策の効果を示すものではありません。[1]

一つの対策が複数の機能を持つこともあります。例えば、手本を見て「自分もやってみたい」と感じる働きはモデリング、その動作を練習して技能を身につける働きは訓練です。名称だけで分類せず、その対策で何を変えたいかを確かめます。

円形の図で隣り合う区画が、そのまま対応するわけではありません。対応は原典Table 2を参照しています。原典の対応を見る。

「もっと説明する」以外にも、今の妨げに合う働きかけを探す。

外側の7つの政策カテゴリー

コミュニケーション・マーケティング/ガイドライン/財政的手段/規制/法制度/環境・社会計画/サービス提供。介入を可能にしたり支えたりする組織・社会の仕組みです。個人で変えられない条件がある場合にも、本人への働きかけだけで完結させません。[1]

03 / 最初に試す働きかけを選ぶ

妨げとのつながりを説明できる変更を、一つ選ぶ。

妨げの仮説座ると動画を見る
流れに入る
働きかけの候補環境の再構成
試す具体策荷物の置き場を
ソファ横から玄関へ

荷物の置き場を変えると、ソファに座る前に外へ出やすくなるか。これを確かめます。

最初に試す方法は、次の三つを目安に選んでみてください。

  1. 妨げとのつながり:その変更で、今止まっている場面がどう変わりそうか。
  2. 実行可能性:今の生活の中で、費用や手間に無理なく試せるか。
  3. 確認のしやすさ:変更を試せたか、行動が変わったかを確かめられるか。

「簡単に変えられるから」「細かいところが気になるから」だけで選ばず、記録した妨げにどう働きかけるかを説明してみてください。候補がいくつかあれば、他の行動にも役立ちそうか、何を手がかりにそう考えたかも比べます。

生活の全領域を一度に変える必要はありません。選んだ領域で小さく試し、期待した変化と負担を確かめます。

最初の一つを選んだら、何が変わると予想するかも決めておく。

複数の対策が必要になることもあります。まず選んだ変更で何が起きるかを、次章の科学者マインドで確かめます。