1章 / ボトルネックの候補を洗い出す
「ここを改善したら、他に何が楽になりそうか」と考えます。いちばん辛い悩みを軽くすることにも価値はあります。その上で、複数の困りごとに共通する条件がないかも探してみてください。
例えば、仕事の集中、勉強、帰宅後の運動がどれも進まないなら、共通して影響していそうな睡眠不足を調べる。勉強時間は取れているのに身につかないなら、教材ごとの細かな工夫を増やす前に、学び方が目標に合っているかを調べる、といった選び方です。
食事・睡眠・運動も候補ですが、誰にとっても最優先とは限りません。一般に大切だからと決めず、自分の困りごととのつながりを手がかりに選びます。波及しそうだという見込みは、まだ仮説です。
領域を選んだら、その中で続けたい行動を具体的にします。例えば運動なら「帰宅後に5分歩く」。ここからは、その行動のどこで止まるかを記録します。
01 / 私たちが出してしまう結論

「能力がない」「やる気がない」「自己コントロールが足りない」。何かが続かなかったとき、こう考えることはないでしょうか。
「やる気がないから歩けない」だけでは、いつ、何を変えるかが決まりません。次も「気合いを入れる」で済ませてしまうと、同じところで止まるかもしれません。
細かな欠点を全部直す前に、今の行動を妨げる条件を探す。
能力や意欲も、行動に関わる条件です。だからこそ、何が足りないのか、どんな工夫や支えがあればできるのかまで考えます。その手がかりとして、まず実際に起きたことを確かめます。
02 / 時系列で、止まる場面を探す
最近うまくいかなかった場面を一つ選び、したことを順に書きます。予定と実際を比べると、どこから違う流れになったかが見えてきます。

| 順序 | 実際にしたこと |
|---|---|
| 帰宅直後 | ソファの横に荷物を置いた。 |
| その後 | ソファに座り、スマートフォンで動画を開いた。 |
| 30分後 | 動画を見続けていた。散歩には出ていなかった。 |
この記録なら、まず見るのは「荷物を置いてから外へ出るまで」です。座った理由はまだ分かりませんが、次に調べる場面は絞れます。
時系列にすると、次に確かめる場面が見えてくる。
思い出せないところは「不明」のまま残します。次に同じ場面があったら、そのときに短く記録してみてください。行動の記録や、行動に影響する条件の分析は、NICEの指針や行動変容技法の分類表(BCT Taxonomy v1)でも扱われています。[2][3]
03 / 行動・身体の状態・思考・解釈を分ける

「疲れを感じた」ことは、そのときの経験です。「疲れが原因で歩かなかった」は、理由についての解釈です。身体の感覚や気持ちも記録しつつ、それが行動を止めた原因かどうかは、分けて考えます。
「面倒くさい」と思ったなら、その言葉で記録してかまいません。考えなのか気持ちなのか、無理に区分を決める必要はありません。その前後に何をしていたかも、あわせて残します。
行動・身体の状態・思考を記録する。原因はまだ仮説。
メタ認知:自分の判断にも目を向ける
メタ認知には、自分の認知過程を把握し、調整する働きが含まれます。[4] この場面で使うなら、「私はダメだ」と思ったときに、「今、自分をダメだと評価している」と気づくことです。自分が出した結論も、振り返る対象にします。
仏教の例:心の状態を、状態として知る
仏教の『念処経』(MN 10)には、快・不快などの感受や、心の状態をそれとして知る実践が説かれています。[5] ここでは、自分が今どんな状態にあるかを観察する例として紹介します。
今回の場面に置き換えるなら、「面倒だ」と感じていることに気づく。その先の「自分には才能がない」という結論とは、分けて捉えてみます。
分析では広げ、行動するときは絞る。
「面倒だった」「やる気がなかった」。一言でまとめると、身体の状態や周囲の状況、その前後の行動が抜け落ちることがあります。SNSの投稿や要約のように、分析まで急いで短くまとめていないでしょうか。
分析するときは、探索モードに切り替えます。何が起き、何を感じ、どこで予定と違う行動を取ったのか。すぐに一言で結論づけず、関係しそうな条件を探します。
分析するときは、一言で片付けない。行動するときは、次にすることを一つに絞る。
行動するときには、次にすることを簡単にしてみる。分析では、見落としを減らすために具体的に見る。この二つを使い分けてみてください。
科学者マインドでも扱ってきたように、起きたことと自分の解釈を分けて観察します。次章では、この記録をCOM-Bで見直し、行動に関わっていそうな条件を探します。